書跡名品の旅

臨書の記録と創作の備忘録

#005【曹全碑】スマート八分習得の絶対的バイブル

後漢
曹全碑(そうぜんのひ)

郃陽令曹全碑。隷書。後漢、中平二年(185年)。西安碑林。漢代の名碑。曹全は敦煌の人。賊を討ち功績が多く、頌徳の碑が建てられている。碑の石質が堅く鮮明で、学書の規範としてよく用いられた。文字は整い、波法が伸びやかで美しく、行き届いた感覚の働きがあり、八分隷として実に流麗清澄な書である。隷書学書の必携本。碑陽は二十行、行四十五字である。(日本習字普及協会『明解書道史』加藤達成・小名木康佑共著より)

臨書↓
【碑陽】
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【碑陰】
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創作↓
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まとめ
・碑陽は書跡名品叢刊(→敢えての清拓)、碑陰は中国法書選を手本とした。(→明拓。中国法書選解説に「碑陰の明拓は、本書によって初めて世に出る稀覯の拓である」とあったため。)異時代の拓を比較しながら臨書すると、拓によって、雰囲気が異なる事がわかる↓
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・柔らかさ、伸びやかさを備えた美しい八分書。よく偏平と言われるが、そうじゃない字も多々あって、自然に縦長な字形もある。個人的には、禮器より前にこれをやった方がいいと思う。
・碑陽は整然としていて手習いに◎。創作には多字数向きか?
・筆先をよく使う。特に点画が込み入っている所はあからさまに細くなるのが愛おしい。(一字の中の太細の変化も見所)
・長い横線はしゃくりあげるような入筆が特徴。
・碑陰は、全体的にコロッとしていて、碑陽のような整然さはない。へんに対しつくりが落ちた正方形〜縦長な字形、丸文字のような印象。空中分解しそうな字もある。碑陽のあの緊張感は?とツッコみたくなるが、個人的にこちらの方が創作の宝庫。小筆で臨書してみたが、意外と楽しい。
・「点を打つか打たないか問題」再び…。点て何だろう…。例えば「文」字は、本文では「文」、碑陰では点三つをミセケチのように打つ「文」と使い分けている。
・近しい字形は張遷碑(186)あたり?
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・西普の筍岳墓誌(304)の字形も参考にした。
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